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水戸女子高等学校
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学校長より

飾りウェーブ

令和3年度

7月

「当たり前のことを、真面目に、心を込めて」は私が生徒や教職員に伝え続けていることです。当たり前と思えることを誠実に実践していくことが、大きな成果につながるからです。2年ぶりの開催となるインターハイの県予選では、ソフトテニス部・バレーボール部が初の団体優勝を果たし、フェンシング部と共にインターハイ団体戦に臨むこととなりました。空手道部の個人戦出場2名を加え、大きな手応えを得ることができました。これも普段から、当たり前を大切にする姿勢から生まれてきたものと信じています。

三十年かけて事実を掘り起こした真実の物語を、最近読むことができました。「囚人服のメロスたち(坂本敏夫著 集英社文庫)」です。大正十二年(一九二三)九月一日に発災した関東大震災により、各地は甚大な被害を受けました。刑務所も例外ではありません。倒壊する建物に身を置く囚人たちの安全のため、横浜刑務所所長である椎名通蔵さんは、二十四時間以内に戻ることを条件に、世界初の完全開放処置を決断したのです。椎名さんは「刑は応報・報復ではなく、教育であるべきだ。その根底に人対人の信頼があればよい。」と考えた方でありました。塀や建物は倒壊し、火災に襲われ大混乱の横浜刑務所は、脱走可能な状況でありましたが、一一三一名の受刑者は一人もその場を離れず、建物の下敷きになった仲間の救出に当たっていたのです。発災当時多くの流言飛語が飛び交い、特に朝鮮の方々に対する虐殺や差別があったことは事実です。そのような状況の中で、柿色の囚人服を着た人々を開放することのリスクは計り知れないものでありました。開放された囚人たちは各地から運ばれた食料の運搬を手伝うなど、復旧に貢献したのです。二十四時間以内に戻れなかった囚人もいましたが、一年後全員が何らかの形で戻っていたことが確認されています。大正十三年十二月刑務所の新築工事に着手し、その工事はすべて受刑者によるものでした。所長の普段からの姿勢、実践がなせる奇跡であると思うのであります。人対人の信頼関係は教育における基本です。身の引き締まる思いで読み終えました。

一学期も保護者の皆さまの本校教育に対してのご理解とご協力に深く感謝申し上げます。