10月

十月の学校通信は、訓育重点月間について述べていることが多いように記憶しています。本校は毎年十月を訓育重点月間として、徳育の深化を意識した取り組みを展開しています。これは「社会に貢献する女性の育成」の建学精神をさらに見つめ直す機会でもあります。これからの社会における女性のあり方を考えた時、単なる生徒指導の強化だけでは、社会が求める人材に応えることはできません。愛され、必要とされ、役に立つ女性として、地域や社会に貢献できる女性を通して、幸せな人生を生徒たちには歩んで欲しいと心から願っています。保護者の皆さまのご理解とご協力をお願い申し上げます。

徳育に限ったことではありませんが、私たち大人の言動は生徒たちに大きな影響を与えます。「教育は後ろ姿」は大学の師より授かった言葉です。今でも新鮮な響きがあります。最近出版された「ルポ不機嫌な老人たち(林美保子著 イースト新書)」では、深刻な大人の状況が報告されています。産業別労働組合「UAゼンセン」の流通部門が約五万人を対象に悪質なクレームに関するアンケートを実施したところ、約七割が悪質なクレームを体験しています。都内私立大学附属病院に勤務する全職員約三万人に院内暴力に関する調査を実施すると約四割が被害を受け、休職や退職に追い込まれた職員も少なくないのです。鉄道係員に対する暴力行為の加害者年齢の調査結果では、最も多い年代は六十歳以上で二十七%を占めており、五十代と合わせると約半数にのぼります。流通部門や病院での迷惑行為も同じような傾向であることが推測されます。さらに共通するのは、社会的地位が高かった人ほど悪質であるという点です。

過去を美化するわけではありませんが、かつての高齢者は地域から尊敬され、若者の模範であったように思います。今年は戦後七十五年の節目となる年です。戦後教育のあり方と、大人の悪質な振る舞いは決して無関係とは言えないと考えます。生徒たちの五十年後を見据えた教育を、私立学校は実践していかなければならないと思う次第です。その重要な部分を占めているのが、徳育の深化であります。