9月

新型コロナウイルス感染症の拡大は世界中に大きな影響を及ぼしています。本校では万全の態勢で今学期も意義ある教育活動を実践してまいります。保護者の皆さまのご理解とご協力に心から感謝する次第です。

最近出版された「世界史を変えたパンデミック(小長谷正明著 幻冬舎新書)」を読むと、人類は天災と同じように感染症とも長く対峙してきたことがわかります。十四世紀前半のヨーロッパは、農業生産性が上がり、人口も増えて豊かになりつつありました。しかし、ペストの流行で四、五年の間に二五〇〇万人から四〇〇〇万人が亡くなったと言われています。ペストはヨーロッパが発生源ではなく、十三世紀に中国に侵攻したモンゴル人によって、風土病であったペスト菌が拡散したようです。中国では一三三一年に死亡率五〇%から七〇%となり、人口が激減し、最終的には元王朝の滅亡の一因となりました。その後もヨーロッパ各地でペストは頻発して流行し、二十世紀に入り抗生物質が出てようやく制圧されました。単純に比較することができませんが、ワクチンや特効薬が開発途上の今の状況は、不安を煽るような報道に踊らされることなく、覚悟を持って臨むことが必要なのだと思います。

わが国では江戸時代末にコレラが大流行しました。一八五八年にペリーを乗せたミシシッピ号が長崎から下田に向けて出港した後、長崎では大変な悪疫が流行し、一五八三人が発症し、七六七人が亡くなった記録が残っています。長崎入港から二カ月足らずの江戸でもコレラが大流行し、この年の江戸の死者は三万から四万人程度と推測されています。ちなみに一八五四年の十一月にはマグニチュード八・四以上の大地震が二日連続で発生し、さらに翌年も大地震が江戸を襲い、合わせて約二万人が命を落としました。天災や感染症においても歴史を振り返り、学び、そして活かしていく智恵が、私たちに求められていると強く感じます。

今学期も建学精神に基づき、教職員一同、当たり前のことを、真面目に、心を込めて取り組んでまいります。御理解と御協力を宜しくお願い申し上げます。