平成19年度
6月
学校での事件の多発や青少年犯罪の増加、また多様化した社会を踏まえ、学校の危機管理が注目されています。災害に対する危機管理、教育学習活動に関する危機管理、学校経営に関する危機管理など、学校の危機管理には様々な分野が含まれます。特に近年多発しているいじめや校内暴力、学校行事での事故等に対する適切な対応が大切なことは言うまでもありません。「学校の危機管理」で本の検索をすると、実に38冊もの本が該当します。
先日学校危機管理研修会に参加した折、「新聞記者から見た学校の危機管理」という演題で、朝日新聞の編集委員である氏岡真弓さんの講演を聴く機会がありました。社会や環境の悪化により、危機管理の意識を高く持つ必要があることは当然です。故に管理体制強化の必要性を説く内容を予想していました。もちろんそのようなことも強調されていましたが、氏岡さんが何度も指摘されたのは、危機管理ばかりを意識することにより、学校が本来持っている息吹や大らかさが失われてしまうというデメリットでありました。平成13年に大阪教育大附属池田小学校で起こった児童殺傷事件以来、形式だけの危機管理が先行しているように感じます。そのような中で、学校が持ち続けるべき大らかさが急速に失われてきたことも事実であります。行き過ぎた危機管理は生徒達を萎縮させ、何事にも積極果敢に挑戦する意欲を奪うことにはならないかと危惧していた私には同感できる内容でした。
危機管理に関する事柄ばかりではなくとも、学校では毎日様々な出来事がおこっています。その出来事の中には、生徒達を大きく伸ばしていくチャンスがある場合も多いのです。ひとつひとつの対応に学校の理念や基本的な方針を盛り込んでいくことが、最も大切なことであると考えます。ここ数年の全国的な事例を調べていくと、危機管理の目的が生徒の安全や育成ではなく、自らの保身ではないかと疑われるような事例が増加しているように感じます。本校は法的責任と同時に、教育的責任を第一に考える学校であり続けたいと思うのであります。