4月

四月に入り、いよいよ平成二十八年度のスタートとなりました。今月から一年生を迎えて、学校内もさらに活気づくことでしょう。今年も新入生の保護者の方々との新たなご縁が生まれたことを心から喜ぶとともに、生徒の育成に共に力を尽くしたく、このご縁を大切にしていきたいと決意を強くするものです。

「教育は後姿」という言葉は、私が師事していた大学の先生の言葉です。今でも教員の心得として常に意識しています。昨今大人のモラルが問われる場面が多くなったように感じています。全国の私鉄、JR、公営鉄道など鉄道事業者共同で毎年実施している「鉄道係員に対する暴力行為の件数・発生状況について」という調査データによれば、乗客による暴行行為は、年間八〇〇件を超え深刻な問題になっています。二年前の調査によれば、加害者の年齢は四十代が二十・一%、五十代が十八・四%、六十代以上が二十一・九%となっており、中高年で六割を占めています。ちなみに十代と二十代を合わせた比率は十五%であり、明らかに大人の問題となっています。これは鉄道に限ったことではなく、病院や学校、飲食店やコンビニに至るまで同じような傾向にあります。

最近出版された「中高年がキレる理由(榎本博明著 平凡社新書)」では、中高年の衝動的行動について社会や職場環境の変化、家庭の問題等の視点から分析していますが、私は戦後教育にもその一因があるのではないかと危惧しています。教育は数十年のスパンで成果をもたらすものです。人としての基本が戦後七十年の間に少しずつ失われているのではないかとの検証も必要です。本校生が中高年になった時、「教育は後姿」を実践できる人材に育てていきたいと強く感じています。

教育には近道はありません。「当たり前のことを、真面目に、心を込める」後姿を生徒達に見せ続けていく中で、感化していくものだと思っています。

今年度も教職員一同は、建学精神である「社会に貢献する女性の育成」の下、全力を尽くす所存であります。保護者の方々の御理解と御協力を宜しくお願い申し上げます。