5月

先日久しぶりに映画を観に行きました。封切になったばかりの「アーティスト」であります。ご存知の方も多いと思いますが、この映画は二〇一一年度第八四回アカデミー賞において、作品賞・監督賞・主演男優賞など五つの賞に輝いた名作です。主人公の飼い犬の演技も大きな話題になりました。一九二〇代の後半、無声映画の大スターであった主人公と彼が見出した女優との物語でありますが、無声映画に固執し落ちぶれていく主人公と、トーキー映画のスターダムへ駆け上がっていく女優を見事に描いた作品です。

この映画の特色は、ほとんどの部分が無声映画のスタイルで展開していることにあります。無声映画を観たことのない私にとっては、とても新鮮でありました。しかし次第に疲れていくことも事実でありました。当然のように聞きなれている言葉がなく、音楽と動作を見て、自ら判断しながら登場人物の思いや意図を読み進めていくからです。

私たちは今、大変豊かで便利な社会で生活しています。そして「説明責任」という言葉に代表される通り、至れり尽くせりの環境で暮らしています。「聞いていない」という言葉で発信者側に責任があるかのような風潮があります。そのような中で人間としての大切な「気づき」の機会を失い続けているような気がしてなりません。

「アーティスト」を観ながら一番感じたことは、無声映画の頃の人々は現代社会より創造力や読解力が長けていたに違いないということでした。映像を通して台詞や表情を読み取り、場面の雰囲気を感じ取ることにより、様々な気づきを得ていたと違いありません。これは人としての基本であると思います。改めて恵まれた環境にいる中で、私たちが失いつつある大切なものを感じた次第です。

お知らせした通り、先月末より新校舎の建設工事が始まりました。生徒達の登下校に際しましては万全の態勢で、事故がないよう努めてまいります。また、保護者の方々には送迎等でご迷惑をおかけいたしますが、何卒ご理解とご協力の程よろしくお願い申し上げます。