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水戸女子高等学校
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学校長より

飾りウェーブ

令和2年度

3月

三月となり、蛍雪の功成った三年生を送り出す時となりました。新卒業生の保護者の皆さまには、心からの祝意とともに、三年間にわたる本校教育への御協力に篤く感謝申し上げます。

新型コロナウイルス感染症の拡大が続く中、先月は臨時休校等で、保護者の皆さまにはご心配をおかけいたしました。引き続き感染防止に努め、充実した学校生活との両立を果たしてまいりたいと思います。今後ともよろしくお願い申し上げます。

新型コロナウイルス感染症の対応に限らず、私たちは様々な場面で判断を求められます。そのために必要なことは幅広い視野を意識することです。

最近読んだ「日本史サイエンス(播田安弘著 講談社)」という本は、物事の広角的な見方を改めて考える機会となりました。通常歴史本は、歴史の研究を極めた方がお書きになるのですが、著者の播田さんは船の設計者です。「麒麟がくる」の余韻もあり、中国地方で毛利氏と対峙していた秀吉が、本能寺の変直後の六月五日に約二万の軍勢で出発し、八日間で約二二〇キロ離れた京都へ到着した「中国大返し」が最も印象に残りました。「神業」と言われた高速行軍を歴史的通説のみに頼らず、科学的に検証することは実に新鮮であります。兵士の一日の消費カロリーは約三、七〇〇キロカロリーと推計し、自衛隊員がかなり厳しい訓練を受けている時と同じくらいとされ、移動は全く不可能ではないようです。しかしこのカロリーを維持するためには一日約四〇トンの米と一日約四万リットルの水が必要となります。さらに馬の飼料等が加わり、膨大な量となります。一日の糞尿量は約三四トンにも達します。また記録によればこの期間の六日間が雨なのです。事前に相当な準備が必要と思われます。秀吉は本隊と別れ、海路を利用して京都に急ぎながら、畿内の武将たちを味方につけたのではないかと著者は結論づけています。リアリティと目的のための最適化を意識する機会となりました。

新卒業生の巣立ち行く時を迎えて、感慨も無量でありますが、ひたすらその人生に幸多かれと心より祈ってやまないのであります。