11月

十月は各中学校で私立高校の説明会が開催され、私も出来る限り出向いて本校の説明をいたしました。また、私との面談方式のオープンスクールも例年以上の参加者で、十月末で昨年を大きく上回る中学生や保護者の方々と面談をしています。

生徒募集は私立学校にとって経営を左右する大事な問題です。少子化が進む中で、各私学は生き残りをかけて広報に努めています。そのような中で本校は、七年連続で生徒数の増加を続けている、全国でも貴重な私立の女子高校となりました。

オープンスクールで中学生と直接対面し、本校の説明をしながら、私は自分自身に問い続けていることがあります。それは目の前にいる生徒と縁が生まれた時、この生徒が三年間本校に通学する意義であります。多くの私立高校、そして県立高校がある中で、本校に通学させる意義は、同時に本校の存在意義にもつながっていくはずです。それは単なる学力向上や三年後の進路実績という目に見える事柄ばかりではなく、もっと根源的なテーマであるはずです。

縁のあった生徒達の数十年後の幸福を真剣に考え、誠実に教育を実践していくことを私自身が意識する機会として、オープンスクールに臨んでいます。私たちは幸福になるためにこの世に生を受けています。その原点を建学精神と連動させて教育を展開することが、本校教育の根幹なのであります。生徒数の確保は私学にとっての経営上の課題であります。だからこそ意義や根幹を見つめ続けることが大切であると考えます。

「葉っぱのフレディ(レオ・バスカーリア作 童話屋刊)」という絵本の中で、フレディはダニエルに「この木も死ぬの?」と尋ねる場面があります。「いつかは死ぬさ。でも『いのち』は永遠に生きているのだよ」とダニエルは答えました。このやりとりは印象的です。当然ながら生徒達は私たち教職員よりも長く生きるはずであります。私たちが真剣に生徒達の幸福を願った教育を辛抱強く続けていけば、必ず私たちの命は生徒達の心の中に生き続けるはずであります。また生き続ける教育をめざすのが本校の在り方なのです。