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水戸女子高等学校
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学校長より

飾りウェーブ

令和5年度

12月

大学生の頃、頻繁に利用していた駅のひとつに上野駅があります。その当時、常磐線は上野駅が終点でありました。中央改札口の上に大きな壁画があったことを記憶しています。

 

全国私学教育研究集会香川大会が先月高松市で開催されました。様々な講演を聴く機会となりましたが、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館学芸部上級学芸員の古野華奈子さんの講演が最も印象的でした。猪熊弦一郎は明治三十五(一九〇二)年に高松市で生まれた画家です。小学生低学年の頃から絵に夢中になり、東京美術学校西洋画科(現東京芸術大学)に入学(後に退学)し、第七回帝展で初入選、その後フランスへ遊学しマティスに学びます。平成三(一九九一)年丸亀市猪熊弦一郎現代美術館が開館し、全ての作品を寄贈します。その二年後東京で逝去しました。

 

すべてを美しいものと捉え、その過程の中で生まれたのが、昭和二十五(一九五〇)年の三越百貨店の包装紙「華ひらく」のデザインであり、翌年の上野駅の壁画「自由」でありました。戦後の傷ついた人々の心を慰めるようなモチーフで描いたのでありました。芸術というのは一部の限られた人のためにあるのではなく、皆がそれを共有して世の中を美しくしたいという思いが猪熊弦一郎にはありました。

 

「思ったことを素直な、虚飾のない姿で」を基本的な思考で猪熊弦一郎の作品は、人や動物から色と形の世界へと変わっていくのです。

 

古野さんの講演で猪熊弦一郎の作品の素晴らしさと同時に、すべてを美しいものと捉え、自由な発想で素直に虚飾のない猪熊さんの考えに、とても共感しました。そしてそれは私立学校にも共通するものであると思います。私学には公立にはない自由があります。生徒達にためにという素直で虚飾のない心で、良いと思ったことを実践していきたいと強く思った次第です。

 

学生の頃は漫然と見ていたあの壁画を、猪熊弦一郎の思いを重ねながら鑑賞したいと思います。

 

一年間の本校教育に対する御協力に深謝しつつ、揃って良い年を迎えられるよう祈念申し上げます。