平成29年度
6月
先月はSNSに関する講話を実施いたしました。使い方によって人間関係に与える悪影響や、犯罪に巻き込まれる危険性をお話しいただきました。情報セキュリティ企業のデジタルアーツが今年三月に実施した、第十回未成年の携帯電話・スマートフォン利用実態調査によると、高校生のスマートフォンの所有率は九十八・五%となり、女子高校生の一日の平均利用時間は驚くべきことに六・一時間との結果となっています。さらに一日十五時間以上と答えた割合が三・九%に達し、状況の深刻化が浮き彫りになっています。しかし高校生の問題ばかりではないことを憂慮しています。
普段は車で移動することが多い私にとって、東京出張時の電車内で、ほとんどの人がスマートフォンの画面にくぎ付けになっている光景は、極めて異常に映ります。これは単なるマナーの問題ではありません。
二〇一三年に日本小児科医会は「スマホに子守りをさせないで!」というポスターを作成しました。その背景には育児に与える深刻な影響があるはずです。授乳時にも画面に夢中になっている母親や、親の代わりに子どもを叱るアプリを育児に使っている母親など、無意識のうちに子どもを放置する親が増加しているようです。ベネッセ教育総合研究所の調査では、二〇一四年現在で、一週間ほとんど毎日スマホと接している二歳児の割合は、二十二%に達しています。自分の欲望や衝動のままに生きるのか、社会性や共感性を持ち規範に従って生きるのかを決定する感情は、生後六か月から二歳頃までに培われます。赤ちゃんは母親との交流の中で、自然にあるべき感情を育てていくはずです。親がスマホに依存し、さらにスマホを与えられての環境では、十年後、二十年後が極めて心配です。
米アップル社を創業したスティーブ・ジョブズが、自分の子どもにiPhoneやiPadを使わせなかったのは有名な話です。教育においてはアナログを貫き、子どもたちの利用を厳しく制限したのは、大きな意味があるはずです。未来を見据え、人間らしさを追い求める教育を進めていきたいと、思いを新たにする次第です。