3月

早春の候となり、桃の節句の佳日には、蛍雪の功なった三年生がめでたく卒業いたします。

三年生の保護者の皆さまに対しましては、心からのお喜びを申し上げるとともに、三年間にわたる学校へのご協力を深く感謝申し上げる次第であります。茨城県武道館での入学式に始まり、一、二学期を仮設校舎で過ごした生徒たちを送り出すことは、極めて感慨深いものがあり、生涯忘れることはありません。

卒業式がある三月は、改めて教育の目的を見つめ直す時期でもあります。本校には、各校に置かれている生徒指導部という校務分掌がありません。生徒指導上の目的は、単に規律を守らせるだけではなく、徳育の深化をその目的としているからです。故に徳育推進部という名称の下で、建学精神に基づいた教育活動を展開しています。社会を美しく、潤いのあるものにするためには、ルールを遵守するだけではなく、女性らしい気配りの実践が求められています。

現代は法治国家であり、それは国が発展した結果のように受け止められていますが、法を守るだけでは美しい社会にはならないはずです。「法に触れていないからやってもいい」と考えることが多く、結果的にルールがどんどん増えていきます。特に最近はその傾向が強くなってきたように感じます。そして美しさどころか、息苦しさを感じるようになりました。

まもなく発生から四年が経つ東日本大震災では、日本人の美しい振る舞いが世界中から賞賛されたのは記憶に新しいところです。しかし我が国は一九二三年に発生した関東大震災においても、同じように賞賛されていたのです。当時駐日フランス大使であったクローデルは、震災直後の日本人の美しい振る舞いを書き残しています。その内容が東日本大震災時と全く同じであるのは、日本人として誇らしく感じます。その源はルールではなく「徳」にあるはずです。社会を美しく、潤いのあるものにするためには、徳を磨くことが最も大切であると考える次第です。

新卒業生の巣立ち行く時を迎えて、感慨も無量でありますが、ひたすらその人生に幸多かれと心より祈ってやまないのであります。