12月

先月文部科学省において「いじめの防止等に関する普及啓発協議会」が開催され、出席してきました。平成二十三年十月に大津市の中学生がいじめにより自殺した事件は、事件前後の学校と教育委員会の不適切な指導や対応が大きく報道されました。平成二十五年九月にいじめ防止対策推進法が施行され、国を挙げていじめ防止に取り組んでいます。当然ながらいじめは許されることではありません。本校でもいじめ防止基本方針を策定し、取り組んでいるところです。

協議会に参加して最も感じたことは、教育の基本、軸を起点とした指導の大切さでした。いじめに特化した指導のみでは、防止作用は期待できるものの、生徒達の将来に一抹の不安が残ります。「耐える力の低下」は私が感じる昨今の生徒達の課題です。耐力の低下がいじめの加害、被害両面に大きく影響しているはずです。いじめのみならず、高い離職率等様々な問題の根幹になっているように思えます。「個々の行為がいじめに当たるか否かの判断は、表面的・形式的に行うことなく、いじめられた児童生徒の立場に立って行うものとする」という文部科学省の定義は、視点を変えればさらに耐力低下を招くものと感じます。

「原点」を意識して物事に当たると、自然に道が拓けてくることを実感しています。先日「吉田松陰とその家族(一坂太郎著 中央公論新社)」を読みました。紙面の都合で詳しく書くことはできませんが、家族の厳しさと温かさが吉田松陰の生き方に大きな影響を与えたことは間違いありません。今の家庭教育にも参考にすべき一冊でした。また認知症において劇的な効果をレポートした「ユマニチュード(NHK取材班望月健著 角川書店)」で印象的だったのは、画期的な方法で症状を改善しているのではなく、「見つめる」「話しかける」という基本に工夫を加えている点でした。これも私たちに大きな示唆を与えています。生徒達の将来を見据え、さらに研鑽し、実践していきたいと感じた次第です。

一年間の本校教育に対する御協力を深謝しつつ、揃って良い年を迎えられるよう祈念申し上げます。