10月

十数年間にわたって,水戸市内の総合病院に定期通院しています。建物も変わり,システムも変わりましたが,人々のあり方もだいぶ変わってきたように感じます。「共生」が時代の流れといいながら,自己中心的な行動をとる人の姿が目立つようになりました。マナーの悪化といえば若い世代が指摘を受けることが多いのですが,私が感じているのは,実は中高年世代におけるマナーの低下です。この世代の方々の言動からは慎みや潔さなど,古きよき日本人の姿を感じ,畏敬の念を抱いた子供の頃の記憶があります。しかしながら最近は,病院の方とのやりとりからでも我儘な振る舞いや,自己中心的な訴えもずいぶん耳にするようになってしまいました。

戦後六十年となり,戦後教育を受けた第一世代が高齢者となる時代となりました。私が子供の頃のお年寄りと言えば,明治生まれや大正生まれの方を指していました。今にして思えば,自分とは違う「何か」を感じながら,成長したのかも知れません。違和感を持つことがありながらも,尊敬や畏敬の念を自然に抱くことができたのでした。その「何か」がこれからの教育のポイントになるはずです。

「修身の教科書」という本がサンマーク出版から先月出版されました。かつてわが国の学校教育の重要な教科目であった「修身」は戦後廃止になりましたが,この本は四十四種類の修身の教科書から,日本人として必要とされる大切な徳目を現代風に編集したものです。歴史上の人物から,名もなき庶民までのエピソードが多数収録されています。難解な表現もなく,一気に読み終えてしまうほどの分量です。内容は古いはずですが,なぜか新鮮に感じました。久しぶりに自分の世代とは違う「何か」を感じることができたからなのかも知れません。

十月は訓育重点月間として生徒指導面の充実を図ります。表面を整えるだけに終わらずに,日本人としての特性の涵養という目的を忘れることなく,充実した一ヶ月にしていきたいと思います。