10月

毎年本校は十月を訓育重点月間として、徳育の深化を意識した取り組みを展開しています。これは単なる生徒指導の強化ではありません。外部の方に制服の着こなしや挨拶等でお褒めの言葉をいただくことがよくありますが、本校がめざしているのは生徒指導の徹底の先にあるものです。集会の度に私が生徒たちに話している、建学精神を具現化するための四つの力(自己コントロール力・コミュニケーション力・行動力・気配り力)をさらに高める月間にしたいと考えています。

私が生徒指導の担当だった二十年前と比較すると、社会全体から二つの「低下」を感じています。第一に「耐える力の低下」です。偏った個性重視の教育は、権利ばかりを主張する風潮を生み、結果的に耐える力を低下させたと思います。離職率の高さや不登校の多さ、さらにはモンスターペアレンツの出現も、突き詰めれば耐える力の低下に起因しているはずです。校則の厳守は生徒たちの個性を奪うものではなく、自己コントロール力を植え付けていくものなのです。

第二に、「気づく力の低下」です。快適で豊かな社会は、私たちの注意力や観察力を低下させる危険性がある時代であるとも言えます。潤いのある、美しい社会にするためには「気配り力」が求められています。

道徳は外面的・物理的強制を伴う法律とは違い、自発的に善を行う内面的原理に基づくものであります。気づく力を育成することが、徳育の深化には不可欠なのです。生徒たちには個と全体、相手の立場を意識した言動を再認識させる月間にしたいと思います。

九月三日の休み時間に、一年生四名が校長室へ来ました。彼女たちは私が校長になって六〇〇〇日目のお祝いに来たというのです。突然のことで状況が把握できなかった私でしたが、七月中旬のクラスマッチ開会式において、今を大切にしようという話の例示で、今日が校長になって五九六五日目であると話した記録が出てきました。彼女たちはそれ以来日数を加算し、六〇〇〇日になった日に来てくれたのでした。素敵な生徒たちとの縁を感謝すると共に、彼女たちの「徳」を感じた瞬間でありました。