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水戸女子高等学校
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学校長より

飾りウェーブ

平成25年度

6月

昨年の六月の学校通信は南三陸町を訪問した時の様子について述べました。今年も同じ時期に私は南三陸町へ車を走らせました。

南三陸町は震災直前の人口が一七,六六六人、世帯数が五,三六二世帯の町でした。一昨年の大震災により亡くなった方が五六六名、行方不明者が二二三名、全半壊世帯は三,三一一世帯にのぼりました(数字は平成二十五年二月二十八日現在 南三陸町HPより)。

海岸の近くは、瓦礫の山が低くなったことと、志津川病院が取り壊されていたこと以外は昨年と同じ風景が広がり、復興には程遠いものがあります。鉄骨だけが残り南三陸町の被害を象徴する建物となった防災対策庁舎付近に観光バスが数台停まっている他は、人の姿を見ることはほとんどありません。まるで時が止まっているかのようです。昨年と同じような殺伐とした心境になり、深刻な被害を再認識しました。

しかし、さんさん商店街の看板に引き寄せられるように車を走らせると、そこには昨年には見ることのできなかった光景がありました。真新しいコンビニが建っています。もちろん仮設でありません。店内に入ると、親子連れや高校生の姿がありました。私がこれまで南三陸で感じたことのない「普通」の光景です。ふと見ると、近くにはドラッグストアも建設が進んでいます。南三陸町の三十の商店が仮設で営業している「さんさん商店街」は大変な賑わいでありました。海からわずか数キロはまさに別世界です。南三陸町の方々の底力を感じました。

私は南三陸町を離れる直前に最大の衝撃を受けました。海が驚くほどきれいなのです。東北の海では見たこともないエメラルドグリーンの海が広がっています。昨年も、そして今年も着いたばかりの時には気づかなかった美しい海です。本来見えていなければならないものが私には見えていませんでした。見えるべきものが見えなかったのは大いに反省すべきことです。どんな状況であっても物事を正しく見据えることは、教育の現場では必要不可欠であるからです。南三陸町の復興をさらに祈ると共に、自らの課題を強く意識しようと思う次第です。